第9章

高橋隆が高橋家に戻った日。

かつて意気揚々としていたその男は、今やまるで飼い主を失った犬のようにうなだれて家の門をくぐった。

その肩はもはや真っ直ぐではなく、足取りからも往年の自信は失われていた。

「私も母も高橋隆に期待などしていなかったけれど、ただ手元の計画を早めただけだわ」

私は静かに独りごちる。母も私も高橋隆を当てにはしていなかった。ただ、手元の段取りを早めたに過ぎない。

彼のその姿を見て、私は三年前のことを思い出さずにはいられなかった。高橋家が次から次へと商業的な罠を仕掛け、提携プロジェクトで松島グループを血本も尽き果てさせようと画策した、あの時のことを。

高...

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